『「柚木沙弥郎」と「女子美工芸の教育」』にてイラストレーションを担当しました

女子美術大学 芸術学部 工芸学科工芸専攻による研究報告書『「柚木沙弥郎」と「女子美工芸の教育」』にて、工芸教室のイラストレーションを担当いたしました。
私は女子美の絵画科洋画専攻を卒業しているのですが、その洋画研究室からの紹介で工芸研究室から依頼を頂いたのは去年の夏のこと。
母校から仕事を依頼されるなど誉れ以外のなにものでもない、と喜んでお引き受けいたしました。

この研究報告書は、かつて女子美術大学の学長も務められ、48年にわたり女子美工芸の教育に尽力された染色家・アーティストである柚木沙弥郎先生を中心に女子美工芸教育の歴史と今を綴っているものです。
女子美の工芸科は歴史も深く、どこの美大にも置いていない設備 ー例えば、女子学生が使いやすい高さ、取り回ししやすい仕様にオーダーメイドされたガス台や流し台、友禅用の13mの大型水槽、柳悦孝先生が独自に設計した織機ー など他大学の先生が見学に訪れるほどだそう。
絹糸を精錬する灰汁も学内で藁を燃やすところから作ったり、織りで使用する木工道具は学生自ら切ったり削ったりして作るなど、その拘りは枚挙に暇がありません。

冊子の構成は1章は柚木沙弥郎先生を中心に。私がイラストレーションを担当しているのは第2章「女子美工芸の教育」内の工房の紹介。
かつての杉並校舎の工房と、現在の工房である相模原校舎の全6教室とテラスを俯瞰で見た説明図です。
これが私にとってはかなり難易度の高い仕事。設備の形、配置、使用方法などは事実通りに描かなくてはならないですが、実際には見たことのない視点からですから、事実と想像を織り交ぜて矛盾なく絵の中に収めなくてはなりません。
また、相模原校舎は実際足を運んで私自身が撮影ができましたが、杉並校舎はすでに過去のものとなっている為、写真と先生方の数十年前の記憶を頼りにレイアウトをしていくという難作業となりました。まるで史実は変えることなくフィクションも織り交ぜていく歴史小説のような作業。修正を重ね、約半年がかりとなりました。(下につづく)

【相模原校舎工房イラスト】

【杉並校舎工房イラスト】

大変な仕事も終わってみると良い経験になりました。なんと言っても母校の歴史に関わる仕事ができたこと、うれしく思っています。
工芸研究室の渡邊先生、荒先生をはじめとした先生方、また、在学中ろくに絵も描かず演劇ばかりやっていた不良学生(それも四半世紀以上前)を紹介してくださった洋画研究室の先生方に感謝しております。

柚木沙弥郎先生は今年秋で100歳を迎えられるとのこと。このタイミングに女子美術大学でも展示があります。
女子美は都心から遠いですが、ロマンスカーを使って旅気分を味わうのがおすすめです(私もロマンスカーで打ち合わせに行ってました)。是非。

柚木沙弥郎の100年-創造の軌跡-
2022年9月17日(土)~10月17日(月)
女子美アートミュージアム (神奈川県相模原市)
http://www.joshibi.net/museum/jam/2022/yunoki.html