シャルジャ国際ブックフェア2018でワークショップを行いました

昨年(2018年11月)の話で恐縮です。
この貴重な体験を全く記録していないのもいかがなものかと、なんとか2019年内にまとめたいと思って書きました。

■ことのはじまり
人生2度目のワークショップが、アラブの国になろうとは考えてもみませんでした。
Sharjah International Book Fair(以下、SIBF)はUAE(アラブ首長国連邦)で毎年行われる世界3大ブックフェアの一つ。
以前から知ってはいたのですが、そこにまさか自分がキッズアクティビティのゲストプレゼンターとして呼ばれるとは。

8月にシャルジャのキッズアクティビティ担当者から直接メールを頂き、ワークショップの企画はないか、との事だったので今の状態で無理なくできる企画を英語の企画書にまとめて送りました。
私が提案したワークショップは「CITY PLAN on Book Tree」というもの。
私が呼ばれたのはおそらく2016年にボローニャ国際絵本原画展に入選しているからだろうと思ったので、その入選作である「CITY PLAN」をブックフェア用にアレンジしました。
紙に絵を描き、切り抜いて、折って、積み上げた本の上に立てて街を作るというシンプルなものです。

先方の反応は良かったのですが、これから選考があるのだろうと思っていたらもうそこで決まっていたようです。気づいた時にはSIBFのサイトにゲストプレゼンターとして自分の名前と写真が載っていたという…。
そこからVISAの書類提出や日程の確認、航空券やホテルを手配してもらい、ワークショップの準備をして日本を発つまではあっという間でした。

■現地へ
シャルジャはUAEのドバイのお隣の首長国。乾いた黄砂とペルシャ湾、伝統的なモスクと高層ビルという対比が非常に面白い所です。
どの国でも都会の風景はおのずと似てくる印象ですが、ここはどこを切り取っても異国感があるのがすごいです。

2018年のブックフェアは日本が名誉国だった為、私以外にも日本人のゲストの方はいらっしゃいました。
日本の文化(折り紙や漫画)を伝える方、食を伝える方、シアターでは忍者ショーもありました。
そして会場には日本語のカタカナをあしらったデザイン、街中にはネオンサインが。


ゲストはシャルジャ内の五つ星ホテルに宿泊、私を含めた日本人ゲストも会場から少し離れたペルシャ湾に面したリゾートホテルに滞在していました。
私のワークショップは1日2回、朝と夜に行われます。
キッズ対象なのに夜の回があるのは不思議な気がしますが、暑いアラブでは昼はお休みの時間。朝と夜が活動時間だそうです。
朝のワークショップが終わるとホテルに帰って食事したりプールに入ったりして過ごし、夜の回の準備をします。
ホテルを出るとSIBFのロゴが入ったレクサスが待機していて、自分が会場に向かうタイミングで送迎して貰えるという…なんという贅沢。

会場へは通常で15分、ところが朝の回ではスクールバス渋滞に巻き込まれて30分近くかかる事もありました。
そう、SIBFの大きな特徴はその動員の多さ。
例えばボローニャチルドレンズブックフェアは、主な目的が絵本の権利のやりとりなので会場にいるのはほぼ絵本関係者ですが、SIBFは一般のお客さんが自由に出入りし、本を購入することも出来ます。
子供たちに至っては学校単位で黄色いバスに乗ってやって来るのです。
なるほど、8つあるワークショップのブースが常に満員なのも、各国から様々なプレゼンターが呼ばれているのも納得です。


現地でのワークショップは全て英語。私は英語が得意ではないので、事前に説明に使うパネルやあんちょこを用意しておきました。
朝のワークショップは30分。夜は60分。ブースの収容人数は20人弱。子供が入れ替わり立ち替わりやってきます。朝の回は大概学校単位です。

イスラム圏特有のルールですが、男の子と女の子の混合クラスは幼稚園くらいまで。小学生以上は男女が別れていて、ワークショップだけでなく会場自体が男の子デーと女の子デーとなっていることもありました。完全にではないですが会場内を見渡して、あれ?今日は男の子ばかりだなと気づくくらい。

絵を描いて、切って、折って、立てる。
事前にプリントアウトしておいた私の線画に色を塗るという選択肢も用意しておきましたが、いざ始めてみるとオリジナルの絵の方が面白かったので子供達に自由に描いてもらうことにしました。
「何でも好きなものを描いて本の上に街を作ろう」という課題ですが、私の作例が影響してしまいアイテムは似てしまいます。
ビルやお店や車や人物や動物…その中で道路標識を描いた子を褒めた記憶があります。新しいアイテムの誕生です。
その後、回数を重ねるに連れて傑作が飛び出るようになりました。電車、飛行機、戦車、道路、虹…!
毎回傾向や流行もあって面白かったです。緑がないことに気づいて木を加えてみたら途端に緑化が進んだり、やたらデビルが蔓延る街になったり。



7日間全12回を終えて気づいた事は、子供たちとのコミュニケーションがしっかり取れていて雰囲気の良かった回は作品の出来も良いという事。
先生という立場の重要性を改めて感じました。

■雑記
1.ブックフェアのブース
ワークショップエリア以外のブースは本当に贅沢な作りで驚いてしまいます。二階建てブースがあったり、大きなモニターがついているブースなどとにかく分かりやすくお金がかかっています。

2.現地スタッフ
8つあるワークショップブースに常駐しているのがコンダクター。私がいたWORK SHOP7はサミラとサナという20代半ばの二人。
最初はうまくコミュニケーションが取れなかったのですが、回を重ねるごとにすっかり仲良くなって、ワークショップが終わると日本語を教えたりしていました。
お年頃の二人が知りたがったのは「日本語で “I Love you” って何ていうの?」でした。可愛い!!

3.イスラムのルール
シャルジャは厳格なイスラム教の首長国なので、ゲスト用のホテルでもお酒は一切扱っていません。お酒が飲みたい時はお隣のドバイに行くしかありません。
服装については、ゲストに対してはヒジャブを着用などのルールはありませんでした。
異性との接し方はたとえ子供であっても小学生以上の男性(異性)にはあまり触れない方が良いようです。

4.ドバイ観光
ワークショップが1回しかない日が2日あったのでドバイに観光に行きました。シャルジャは完全に車移動ですが、ドバイは最近メトロが出来たとのことで乗ってみました。
ドバイ・ファウンテンを見たり、世界で最も高いビルであるブルジュ・ハリファの上階にも行きました。ドバイは何でもかんでも巨大でギラギラに光っている印象(写真左)ですが、旧市街(右)はとても味があって古い建物がギャラリーやカフェに改装されていました。

5.日本への関心
私は和服は着ませんでしたが、和服を着用した日本人ゲストの方と一緒に会場を歩いていると学生の子たちに日本から来たの!?と聞かれ一緒に写真を撮って欲しいと頼まれます。
私たちが思っている以上に日本は馴染みのある国。日本の漫画はやはりアラブでも大人気なのです。
クールジャパンは解せないですが、日本人が行く先々でひそかにドラゴンボールやNARUTOに助けて貰っているのは確かだと思います。

6.世界のダイソー
ワークショップ用に頼んでいたものが用意されていないというハプニングも。厚手の画用紙がなくて自力で調達しましたが、頼りになったのが現地のダイソー。
日本円にすると100均ではなく、確か250均くらいだったような。ドバイとシャルジャのダイソーには本当にお世話になりました。

7.最後の夜の思い出
フェアが終了した夜、送迎車に乗り合わせたオーストラリアの絵本関係の女性は、ホテルのエレベーターでも度々会っていた人でした。
彼女が「セントラルスークに行ってみたくない?」というので行ってみたいと答えたら、ドライバーさんに頼んでくれて、いつもは通りすぎていた美しい建物に立ち寄ることができました。
ちょっとしたご褒美のような思い出です。悔やまれるのは、彼女に名前を聞かなかったこと。また会える機会があればいいな。

思い出すと去年の話でもう一年か…というより、あれは本当に自分の人生にあった出来事だったのかしら?と思うくらい、エキサイティングな体験でした。

さて、この一週間後は台湾の大学でワークショップです。エキサイティングな体験はまだ続く…(記事は後ほど)